ソクラテスメソッドの有用性と対策法

ロースクールに入学された方は授業が開始された頃だと思いますので、ローを修了した立場(すでに予備試験経由で司法試験に合格しています)から簡単にソクラテスメソッドについて書いていきたいと思います。

ロースクールでは双方向授業という文科省か何かが出した方針を形式的に遵守するためソクラテスメソッドというものが実施されます

ソクラテスと名はついていますが、実際にはただの質疑応答であることがほとんどでしょう。

ロースクールの規模にもよると思いますが大人数のクラスで基本的には順番に当てられるか、ランダムで当てられます。

例えば私の出身のロースクールでは入学当初50名程度のクラスですので3回に1回くらいは当てられます。

順番に当てられる場合は予想がつくので当てられる問題を予想してそこを中心に対策をすると効果的です。書き起こしや先輩ノートの類を利用すれば負担をさらに軽くすることもできます。

書き起こしとほぼ同じ授業する教授もいるので、そのような時はあたる設問を予測してその周辺の設問のみ予習することをしていました。また、しばらく当たらないと踏んだ時は一切予習せずに授業に出ることもありました(なお、不意打ちがきたときは…)。ロー在学中に予備試験にどうしても合格したいという方はどこかで力を抜くということも有効な手段ではないかと思います(もちろん、両立できる自信がある方にとっては、両立も不可能ではないので必ずしもそうしなければならないというわけではありません)

ランダムで当てられる場合、いつ当てられるかわからないという緊張感から授業に集中できないという声もよく聞きます。順番に当てるとそこしか予習しない人が出てくるためランダムにしていることが多いと思われますが、そもそも大人数のクラスで当てられる回数も少ないのですし、基本的には無駄な負担を課しているだけでデメリットの方が上回っています。

対策としては①順番に当てるように抗議する②変なところで当てられないように祈るというのが考えられます

と、ここまでソクラテスメソッドについて多少否定的な書き振りで書きましたが、ソクラテスメソッドが完全に悪いものだというわけではありません。

学部だとどうしてもゼミや自主ゼミ(なお、僕が運営している「みんなでオンライン自主ゼミ」では自主ゼミメンバーを募集することができます!)、予備試験口述試験以外で法的な議論を口頭で行う機会はなかなかありません。しかし、ロースクールでは教授や法曹実務家と法的議論をすることができ、これはかなり貴重な機会だと思います。また、同様に法曹を目指す同級生ないしライバルの受け答えを聞いて受験生の相場感を図ったり、またモチベーションを高めることができます。実際、凄まじく出来るロー生もいて刺激を受けることがありました。

また、上手く答えられると気分がいいというメリットもあります笑

ただ、上記のメリットがあるとしても、ソクラテスメソッド中心のロースクール生活を送っているだけだと予備試験、司法試験への対策としては不十分だと思います。

口頭で応える力と文章で答える力というのは必ずしも一致しません。もし、司法試験や予備試験に早いうちに確実に合格したい、そしてそれが当面の最優先事項だというロースクール生がいれば、予習の負担を出来るだけ軽くする方向に力を入れるべきです。確かにソクラテスメソッドは答えられれば楽しいですし、それ自体の有用性は否定しませんが、司法試験は書面で評価される以上、司法試験対策としては問題を解くこと、特に文章を書くことを中心に据えるべきです。

ソクラテスメソッドがあり、答えられないと恥ずかしいから予習するというのは本末転倒です。

ソクラテスメソッドに対応できないとしても、デメリットは恥ずかしいというだけです。一方、司法試験に対応できる見込みも立っていないのにロースクールの勉強(特に予習)に時間をかけすぎることはリスクが大きいです。

また、個人的な感覚としても司法試験の合否のみならずロースクールの成績ですら質疑応答の出来との相関関係は大きくないと思います。

期末試験が事例問題であれば、予備試験、司法試験での答案作成力が割とそのまま反映されます(もちろん、授業で扱っているが予備試験、司法試験では出題されにくい箇所を出すのが好きな先生であったり、特殊な出題形式の先生もいますので過去問を見て個別に判断する必要があります)

私自身、ローで成績優秀者の表彰を受ける程度の成績は取っていましたが、これはローの授業の予習を頑張ったからではなく、予備試験の勉強を頑張ったおかげで向上した答案作成力によるものだと感じます。

結局はローの予習やソクラテスメソッドにどれだけ力を入れるかは、恥をかきたくないとか、プライドといった気持ちの問題が多くの占めるのであって、司法試験や予備試験に合格するという観点からすれば特に役に立つものでもありません(間接的に役立つことも稀にあるかもしれませんが、少なくとも直接的には役立たず、また役に立ったという実感はありません(無意識のうちに役に立っているという可能性もあるかもしれませんが基本的には予備校に通っていれば予備校で十分合格でき、またそちらの方が近道という感覚です)。もちろん、試験との関係で、という意味であり、実務に出てから役に立つのかもしれませんが、これはまだ実務に出ていないのでわかりません)

もちろん、ローでの勉強やソクラテスメソッドを完全に否定するつもりもありませんが、特に予習と試験勉強のバランスに苦しんでいる人が多いのではないかと思い、書いてみました。本来の目的を見失うことなく、自分にとっての優先事項を意識することが大切だと思います。

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